田面船(広島県尾道市)
柄杓(ひしゃく)の材料にする薄板で作られた屋形船で、旧暦八月
一日の八朔に行われる田面(たのも)の節句に用いられるもの。
「田面」とは「田の実」のことで、豊作を祈る農家の祭りである。
備後米の産地として知られるこの地方ではこの祭りが盛んで、
この日は田面の船にしんこ細工の馬や人形を飾って川へ流した。
また、尾道市内の柄杓製作業者たちが柄杓や神棚作りの片手間に
作ったもので、この地方では、男の子が産まれたらこれを贈る
ならわしがあり、もらった家はこれを乳児の寝ている天井につるし、
歩けるようになったら船にしんこ細工でできた人形をのせて、
引きながら神様に参詣する。
元来は豊作祈願であったものが、
幼児の健やかな成長祈願の意味を加えてきたものである。